検討会設立趣旨
光無線給電検討会設立趣旨

 ほとんどの機器・装置は電気エネルギーと情報を利用しています.このような機器・装置は,IoT(Internet of Things)端末,家電,産業機器,移動体などの形で,今後さらにその数の増加や種類・範囲の拡大が見込まれています.この流れの中で,すでに情報の「無線化」は標準になっています.情報通信に有線配線を利用するという意識は多くの機器で消えており,無線化とその高度化が急速に進んでいます.これは,無線化による格段の利便性向上や新規応用創出が期待され,そのことが社会・経済の変革につながるためです.
 情報の無線化が進む一方で,ほぼすべての機器・装置は,充電も含めて電気配線による電力供給が必要です.この配線による電力供給は,配線の手間などの利便性低下や利用環境,連続運用の制限などの要因になっています.これまでは,これらは必然として受け入れら,その必然の意識と実際の制限は,機器・装置の真の無線化による社会・経済の変革のポテンシャルを大きく抑制していたと考えられます.極小電力で動作するセンサーや情報端末だけでなく,移動体なども含む比較的大きな電力を必要とする機器・装置まで膨大な種類が存在しています.これらすべての機器・装置への電力の無線供給(無線給電)が可能になれば,情報の無線化と相まって,新しい社会を形作る重要な起点になると考えられます.
 既に,電磁誘導などによる無線給電技術が存在し,利用が広がり始めています.しかし,さまざまな機器・装置への利用を考えると,供給電力量,無線伝送距離,装置サイズなどに課題があります.さらに,これら既存方式では電磁波の漏れによる機器・装置への電磁妨害なども大きな課題となっています.これらの課題のために,無線給電を利用可能な機器・装置や利用環境が大きく制限されていることから,その改善に向けた検討も進められています.
 光を用いた無線給電(光無線給電)は,これまでの電磁誘導などに基づく技術と大きく異なる原理により,機器・装置の給電の無線化を発展させる重要な技術になると考えています.光無線給電は,そのシステムの基本的構成が既存の技術・デバイスで可能という高い実現性を持っています.またその原理から,既存の無線給電技術の課題の多くを克服できる可能性があります.このため,光無線給電はさまざまな機器・装置を無線化する主流の方式になると考えられます.一方で,これまでのところ,光無線給電は,実用事例がないだけでなく研究事例も非常に少ない状況にありました(2016年時点).その有用性や適用範囲の広さを考えると,今こそ光無線給電の基盤技術の研究開発や,システム化・応用機器開発などの市場探索を進めることは,社会的・経済的に有意義であると考えています.
 このように,光無線給電はこれから発展が期待できる分野です.しかし,その研究開発や市場化を単独の企業や研究室が個別に実施しても,社会・経済に大きなインパクトを与える「もの・こと」につなげることは困難です.光無線給電の多面的な展開には,光無線給電に関する知見を共有し,研究開発・市場開拓におけるエコシステムの構築を有効に進めるための,人や情報の集まる場を準備することが必要です.そこでそのような場を提供するために,『光無線給電検討会』を設置することとしました.この検討会では,光無線給電の技術進展と市場形成,またその展開・拡大などの活性化に向けて,要素技術・システム,および,応用領域・市場の動向を把握するとともに,技術・システムの標準化・規格化・規制設置などに関わる基盤的知見の構築を行います.企業・大学・国立研究機関・関連団体との連携により,光無線給電の社会への浸透とそれによる社会・経済の変革に向けた枠組み作りをサポートすることを目的とします.

2016年1月

光無線給電検討会 発起人


※本検討会では,光を用いた給電全体を検討対象にしています.(無線:電気配線が無い)